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8人の“秘密”が音になる。tripleS ∞!『SecretHimitsuBimil』全曲レビュー!

K-POPガールズグループ最多(2025年10月現在)の24人のメンバーで構成されるtripleS。

そんなtripleSから、S3 ジウ、S4 チェヨン、S5 ユヨン、S6 スミン、S11 コトネ、S16 マユ、S20 シオン、S21 チェウォンの8名が参加する日本選抜ユニットtripleS ∞!(読み:トリプルエスハッチ!)のEP「SecretHimitsuBimil」が、2025年10月1日(水)にリリースされた。通常盤では、タイトル曲「Password」を含む7曲が収録されている。

当EPのタイトルである「SecretHimitsuBimil」は、英語で秘密を意味する”Secret”、日本語の“秘密”、韓国語で秘密を意味する“비밀(Bimil)”と3か国語の“秘密”から構成された造語である。
この“秘密”が何を意味しているのか、それぞれの楽曲にどのようなメッセージが込められているのか…今回はその1曲1曲を歌詞やサウンドなど様々な角度からひも解いていく。

1.Password

  I wanna touch your secret 隠さないで
  Let’s login now baby もうすぐなの

本EPの表題曲である「Password」。tripleSのシグネチャーサウンドともいえる“lalala”のイントロから始まり、重厚なベースが空間を支配する。クールでスタイリッシュなトーンがEP全体の世界観を導入するのにふさわしい、完璧な幕開け曲だ。

どっしりとしたベースラインの上に、清らかで透明感のある旋律とメンバーの華やかな歌声が重なり、 硬質さと繊細さの融合が見事に成立している。ベースが中心となったシンプルなリズム構成から、Bメロ〜サビにかけて徐々に音の厚みが増していく。
そのため、BPMはゆったりしていながらも、楽曲全体には確かな疾走感と華やかさが宿っている。

EPのテーマである「秘密(Secret / Himitsu / Bimil)」に反して、初手から“Password(パスワード)”というタイトルを掲げるのは挑戦的。日本語作品ではありがちな「“日本語を無理やり押し込んだ雰囲気」ではなく、日本語の歌詞が織りなす世界観がサウンドにしっかり溶け込んでおり、メンバーと制作陣の本気度がにじむ。

2.ヘッドフォン

  外せないの headphones
  聴きたいのもっと この恋は一方通行

イントロはどこか幻想的
やわらかなシンセに導かれるように、歌い出しとともにバスドラムが5つ打ち──その瞬間、恋の霧の中に没入していくような感覚に包まれる。

この曲は、“ヘッドフォンのノイズキャンセリング”を恋のもやもやに苛まれる比喩として使った繊細な一曲。一筋縄ではいかない片想いにイライラしたり、想像を膨らませてわくわくしたり。そんな思春期のような不安定な感情の揺らぎを、音とリズムで見事に描いている。

舞台は教室。 放課後のざわめきの中で、相手の存在だけがクリアに聞こえるような、静寂と喧騒のあいだを行き来する情景が浮かぶ。

サビ終わりで音がふっと抜けたり、リズムが一瞬アップテンポに変化したりする構成が、その幻想性と揺らぎをさらに際立たせている。ヘッドフォン越しの音楽のように、相手に届かない想いを“自分だけの世界”で聴き続ける_そんな切なさと中毒性が残る曲だ。

3.トキメティック

  本当は誰だって唯一無二の special
  信じるのよ 高鳴る heart

再びtripleSのシグネチャーサウンド“lalala”で始まる、 清涼感たっぷりのイントロが印象的な一曲。切なさをまといつつも淡い光が差し込むような“希望”の空気が全編を包み込む。
歌詞は全体としてコスメをテーマとしており、おろしたてのアイシャドウパレットを開くような胸の高鳴りを全身で感じることができる。

この曲の最も大きな特徴はコード進行にある。4つ目の和音が交互に変化することで、現実と夢のあいだを漂うような、ふわふわしたサウンドが広がっている。まるで朝の風が止まることなく吹き抜けていくような心地よさは、この和音の不安定さがもたらしてるのである。

しかし落ちサビで空気ががらりと変わる。それまでの“はじけるような多幸感”が一瞬静まり、落ち着いたトーンで自分自身を見つめ直すようなパートへ。そこから再びラスサビで解き放たれるように高鳴る展開が、まさに“ときめき”そのものの構造になっている。
迷いや不安を抱えていても、この曲がそっと背中を押してくれる。 “自己肯定”をテーマにしたような、EP中もっともピュアな光を放つ一曲

4.TOKYO

  ヘッドホン取って spicy
  きっと君は この街のリアルな場所に

少女の浮足立った感情が、音から、旋律から、言葉から滲み出す
近未来的なイントロと沈み込むバスドラムが、ネオン街を思わせる都会の光を描く。無機質なシンセの中に、期待と不安が同居するような高揚感が漂う。

“ヘッドフォン”で描かれた内向的な世界から一歩外へ、東京という都市で現実と夢が交錯する瞬間へと踏み出す、感情と都市のノイズが溶け合うような一曲。
イントロの電子的なビートと沈み込むバスドラムが、近未来の東京を思わせる。 歌詞には 「Wi-Fi」「プリント倶楽部」「ネオンのトリック」「たくさんのシティライト」 といった、テクノロジーと少女文化を象徴するワードが散りばめられ、現代の大都会を感性で切り取ったスナップのような世界が広がる。

“リアル”とは何か、を問いかけるように、デジタルとアナログ、夢と現実の境界を軽やかに往復する。 tripleSらしい都会的な感性のアップデートを感じさせる1曲だ。

5.Oshare

  ドレスコードはあたしよ
  毎日を update あたしたち Oshare

レトロなシンセがきらめくイントロは、近年のK-POPで流行しているレトロポップを感じさせる。その瞬間に感じる“これから始まる”という高揚感は、ディスコポップならではの魅力だ。弾むベースと軽やかなリズムが、聴き手を一瞬で幻想的な世界へと誘う。

タイトルの“Oshare”は、一見ストレートすぎて驚かされるが、聴き進めるうちにそれが自己表現の象徴であることに気づく。タイトル通り、かわいく・おしゃれに生きたいという願いを世代や性別を超えて掬い取る、tripleS流のアンセムだ。流行のメロディラインの中にもメッセージ性を忘れないことで、唯一無二の世界観を構築している。

ディスコのきらめきを纏いながらも、コード進行には一抹の切なさがあり、 かわいいだけではない芯の強さを感じさせる。「TOKYO」が外の世界への眼差しなら、「Oshare」はその街で自分をどんな光で照らすかを歌った一曲だ。
曲名がこれほどしっくりくる楽曲も珍しい。 “おしゃれ”を外側の飾りではなく、“生き方”として肯定するメッセージが響く。

6.アンタイトル

  震える鼓動もリズムにして 1.2.3 Let’s Dance

この曲は2024年11月にリリースされた日本デビューシングルだ。
軽やかな2stepのリズムに浮遊感のあるシンセが重なる、おしゃれで無機質な、どこか切ないサウンドが印象的な楽曲。アップテンポながらも、どこか初冬の夜のような静けさと透明感を帯びている。日本語曲でここまで純度の高い2ステップをやってのけるのは驚きだ。冷たい空気を含んだトラックの中に、確かな温度が宿る。
“無題”というタイトルに対して、歌詞中で

  タイトルはまだ ここからそう描いていく

と歌うことで、未完成であることそのものを肯定する構成になっている。

自分が逆境に立たされたとき、困難に直面したとき、「アンタイトル」は静かに寄り添いながら、前へ進む力を思い出させてくれる。「未完成ながら突き進んでいく」tripleSが持つ少女性というテーマと静かな覚悟を一挙に味わうことのできる、そんな1曲だ。

7.### (∞! Ver.)

  好きなもの 好きと言える私がいい
  私の人生の基準は私なの

この楽曲も「アンタイトル」同様に過去にリリースされたシングル曲であり、2024年7月のプレーデビューソングとして公開されたものだ。今回は∞ver.としてメンバー編成に変更を加えて収録されている。

この曲最大の魅力は、平成アニソンの王道を思わせるキラキラとしたコード進行と、 セルフラブや自己確立を掲げてきたtripleSのメッセージが、驚くほど自然に溶け合っているところだろう。

高揚感のあるイントロから、定番となった“lalala”の歌い出しへ。
 tripleSがこれまで描いてきた「自分を信じる」「自分の美しさを定義する」というメッセージは、日本語の“情感の近さ”によって初めて、聴き手の心に直接届く
それは単なる言語の違いではなく、平成アニソン的エモーションとK-POP的構築美の融合が生んだ“感情の共鳴”だ。この楽曲を彼女たちが日本語で歌うことには、明確な意味があるとさえ感じる。

この曲は、『SecretHimitsuBimil』というEPが掲げる “秘密=隠された自己を発見する”というテーマを、最も鮮やかな形で外へ放った一曲である。

おわりに_タイトルに込められた想い

『SecretHimitsuBimil』は、“秘密”という言葉を鍵に、自己と世界をどう接続していくかを問いかける作品だ。「Password」で扉を開き、「Oshare」で自分を描き出し、「### (∞! Ver.)」で未来へ続く余白を残す――
すべての曲が円環のように響き合い、聴く者自身の“心のパスワード”を解く体験へと導いていく。

tripleSが積み重ねてきたセルフラブや自己表現というメッセージは、日本語という感情の粒度の中でさらに輪郭を増し、「Secret / Himitsu / Bimil」という3つの言語が象徴する“多層的な私”の存在を浮かび上がらせる。つまり、このEPにおける“秘密”とは、恋を通して新たな自分と出会う旅だと解釈できるだろう。

この秋冬、『SecretHimitsuBimil』とともに、自分をほんの少し好きになれる…そんな瞬間を迎えてみてはいかがだろうか。

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