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【イベントレポート】ケント・モリが送る、日本の伝統芸能を織り込んだニュー・エンターテインメント「JAPAN to the World」。ダンサー、クリエイター、アーティストとして魅せるボディランゲージの新境地。

文:ヒサキ アラタ

マドンナにアッシャー、クリスブラウン、ニーヨにチャカ・カーンなど、数多くの世界的アーティストの専属ダンサーとしてその名を轟かせたケント・モリ。

ボディランゲージをアートの領域まで昇華する彼がつくりあげる新感覚のダンス・エンターテインメント「JAPAN to the World」が5月29日(木)に東京有楽町・I’M A SHOWにて開催された。

かつて、あのマイケル・ジャクソンとマドンナが彼を奪い合ったという逸話からもうかがえるように、ケント・モリの魅力はダンスだけにはとどまらない。

近年では、現実の世界にデジタル情報を重ね、現実を拡張するAR(Augmented Reality)を用いて、自身の表現をより高次なものへと飛躍させている。

今回開催された「JAPAN to the World」は、ダンサーとしての垣根を超えた彼の表現が存分に詰め込まれた、全く新しいエンターテインメント・ショーだ。

この前代未聞のイベントの全貌、表現者としての彼の魅力、そしてこのショーを通して彼が伝えたいことをレポートしていく。

どこか怪しげで妖美な和のムードが漂うステージ

ステージからは荘厳な雰囲気。ホール全体の静寂を打ち破り、ショーの始まりを告げるのは和太鼓奏者・陽介が放つ渾身の一打。彼の演奏は、「三宅太鼓」などのスタイルを得意とし、爆発的なエネルギーと繊細な表現力を兼ね備えている。今回のショーでは、和太鼓と舞台芸術を融合させた独自の世界観を創出していた。

続いて登場したのは舞書家・CHADO.。書道と舞踊を融合させた新しい表現形式「舞書(まいしょ)」という独自のパフォーマンスを創始した鋭敏なアーティスト。


和太鼓の豪快な音色に合わせて巨大な紙につづるのは、当イベントのタイトルである「Japan To The World」の文字。これから始まる前代未聞のエンターテインメントを、日本文化とともに表現した壮大なオープニングは、観客全員に強烈なインパクトを残した。

プロローグを読み上げるのはカナダ人落語家の桂三輝。彼もまた、欧米人でありながら日本文化に惚れ込んだ一人。

英語やフランス語で落語を行う彼は単なる翻訳にとどまらず、文化の架け橋としての役割を果たしている。落語を通じて、日本のユーモアや人情を世界に伝えることで、異文化間の理解と交流を促進しており、グローバルな観点からみても重要な活動を行う人物だといえる。
スクリーンの日本語とともに英語で語られた見事な口上はまさに圧巻。日本の魅力を世界へ発信する当イベントにおいて、これ以上ないキャスティングだといえる。

オープニングから各分野のスペシャリストたちが揃い踏みし、畳みかけられる見事なパフォーマンスに圧倒された数分間であった。
このように、序盤から出し惜しみのない豪華なキャスティングもこのショーの魅力の一つだ。

これらの客演は単なる“彩り”ではない。ケント・モリのビジョンに共鳴し、それぞれのフィールドで極めた技術と精神性を持つアーティストたちが一堂に会することで、舞台は単なるダンスショーにとどまらず、「文化的声明」とも言える重層的な意味を持つ作品となった。

このように「JAPAN to the World」は、ケント・モリだけでなく、多彩な才能とその魂が結集することで完成された「共創の舞台」でもあるのだ。

ステージを彩る津軽三味線から、ついに登場する2人

続いて、国内随一の津軽三味線奏者・飯田華那が会場の雰囲気を疾走感のある和のムードに仕立てあげた。

津軽三味線の音色に魅了された彼女のスタイルは、「弾く」というよりも「叩く」と表現されるダイナミックな奏法であり、和の繊細な旋律と力強い演奏が観客の心を打ちのめした。伝統を重んじながらも新たな表現を追求し、津軽三味線の魅力を世界に発信する彼女はこのステージにふさわしい表現者だといえる。

満を持して登場するのはフロントマンであるケント・モリと、その「影」。対をなす彼らの表現、ダンスを通してのコミュニケーションは素晴らしく、このショーの目玉といっても過言ではない。「影」を演じるのはケント・モリがプロデュースする気鋭のダンサー・ASAHIIだ。幼少期の頃から彼のことを知るケントが、今回のステージで自身の対をなす重大な「影」に抜擢したのにも何か意味がありそう。

ケント・モリにしか成し得ない、唯一無二の表現

ここからは堰を切ったように、音楽とダンス、日本の伝統芸能がこれまでにない新しい形で織りなされ、まさしく「ケント・モリだけのステージ」が繰り広げられた。

ケント・モリのダンスの魅力は、単なる技術の巧みさや派手な演出にとどまらず、彼自身の「生き方」や「メッセージ」がそのまま身体表現となって伝わってくる点にある。彼のダンスは、観る者の心を動かし、時には涙さえ誘うような「魂の表現」とも言える力を持っている。

彼の最大の特徴の一つとして、感情をダンスで可視化する表現力の高さがあげられる。動き一つ一つに物語性が宿っており、ただ音楽に乗って踊るのではなく、まるで言葉のように「伝える」ダンスなのだ。彼の身体の動きからは「悲しみ」「怒り」「祈り」「希望」といった感情を読み取り、自身の体験や想いと自然に重ね合わせることができるのだ。

そして、彼の唯一無二性は、ジャンルにとらわれないことからも生まれる。ヒップホップ、ポップ、ロック、コンテンポラリーなど様々な要素を自由に行き来し、それらを一つの「物語」として昇華させるのが、彼のダンスであり、ボディランゲージとしての表現なのである。当イベントでも、日本の伝統音楽とダンスとの融合、ARやプロジェクションマッピングと連携した演出の中で踊るなど、「今この時代にしかできないダンス」を常に更新し続けているのだ。

「踊り」と「祈り」

今回のショーでも印象的であったのは、ケント・モリがステージ上で「祈るように」踊る瞬間だ。まるで宗教儀式のように神聖さを帯びた動きで、観客はただ「観る」のではなく、自然と「参加している」ような感覚を覚えたはず。彼はダンスを、個人のためのパフォーマンスではなく、「誰かのため」「世界のため」に捧げる手段として捉えており、その精神性が踊りの端々に表れている。

そして、祈りが込められたその洗練された動きは、肉体と精神が完全に一体化しているように見せるのである。彼の動きには無駄がなく、音楽、空間、感情、そして身体が完全に一致した瞬間を生み出します。これは、彼がダンスを「武道」や「修行」と同様に、高度な精神集中を要する行為として取り組んでいるからこそできる表現なのだ。

彼の身体はまるで「舞うために作られた楽器」のようであり、このショーでもその音色で観客を魅了していた。

ケント・モリがショーを通して表現したいこと

彼が世界的スターとともにつくりあげ、体感してきたトップレベルのエンターテインメントと、日本の伝統芸能の融合を一言で表すなら、それは「異次元の世界」ではなかろうか。

島根県の郷土芸能・石見神楽の荘厳な大蛇とケント・モリの世界トップレベルのダンスの共演、会場全体を使用したパフォーマンスからは、まるで百鬼夜行のさながらの世界。特に、歌舞伎舞踊の孝藤右近、孝藤左近が客席後方から登場するシーンでは、その厳かな雰囲気からある種の神々しさを感じるほどであった。

世界中の人を魅了してきた彼の表現と、古来から残る日本の伝統芸能を混ぜ合わせる実験的な試み、そこに彼の得意とするARなど先端のデジタルアートが合わさることで、ファンタジーのような現実離れした世界が作り上げられていた。

それは、彼が表現したいボディランゲージの真骨頂である。世界中どこに行っても伝わる言語を用いない表現、アニメや漫画のような現実離れした世界観。日本の伝統文化を世界に広める手段として、これ以上に適した表現方法はそうないだろう。そして、子供たちはもちろん、童心を忘れた大人たちにもかつての遊び心や衝動を思い出させるパフォーマンスに魅了されるはずだ。

ケント・モリは、「日本には、世界に誇れる文化、精神が存在する」と語り、「日本を世界へ」というビジョンを実現することを目指している。彼は、世界から見れば日本も世界の一部と考え、様々な国の人々に対して日本文化の魅力を共有したいという熱意を持っているのだ。

「JAPAN to the WORLD」は、伝統と革新、過去と未来、個人と社会をつなぐ壮大なストーリーを持つショーなのである。ケント・モリのビジョンと情熱が詰まったこのプロジェクトは、日本文化の新たな可能性を世界に示すものとなり得るはず。観客は、ステージ上のパフォーマンスを通じて、自身の内面と向き合い、世界とのつながりを感じることができることだろう。

「武器」ではなく「舞気」を持とう

彼は終演後の舞台挨拶にて、頻りに『「武器」ではなく「舞気」を持とう。』と述べていた。

「舞気」とは、「舞う気」と書いて「ぶき」と読み、彼が自身の活動や信念を表現するために用いている造語だ。彼は、ダンスを通じて人々の心をつなぎ、世界平和への一歩を踏み出す手段として「舞気」を定義している。

彼は、現代社会における武力や争いに対して、ダンスという非暴力的な表現を通じて対抗しようとしているのだ。「舞気」は、武器ではなく、舞う気持ちを持つことで、相手の銃口を下げ、友達になることを目指すという彼の平和への願いを体現している。

平和を壊す戦争のための「武器」ではなく、踊り楽しむ気持ちである「舞気」が世界中に広まることで、世界平和へ向けての第一歩につなげたいという意図があり、これこそが、日本の文化の発信と並び、彼がこのステージを通じて成し遂げたいもう一つの目的なのだ。

「舞気」は、ダンスを通じて世界を変えるという彼の強い信念と情熱の表れだともいえる。彼は、ダンスを単なる芸術表現としてではなく、人々をつなぎ、平和を築くための手段として捉えているのだ。「舞気」は、彼の活動を通じて、多くの人々に希望とインスピレーションを与え続けていくはずだ。

ダンサー、クリエイター、そしてアーティストとして。「JAPAN to  the World」とともに目指す世界

彼の感情表現を重視したダンススタイル、世界で活躍するアーティストたちとの共演、最先端技術との融合、日本文化とのコラボレーション、そして教育活動と、多岐にわたる特長を持ったこのステージ。これらの要素が組み合わさることで、彼のパフォーマンスは単なるダンスを超えた、深いメッセージ性と革新性を持つエンターテインメントとして成立している。そしてこのショーは、単なるパフォーマンスの集合体ではなく、明確なストーリーラインを持ち、観客に深い感動とメッセージを届けるのだ。

「JAPAN to the WORLD」は、世界80億人をターゲットに、日本の伝統と現代の融合を広めることを目指し、今後も国内外のスペシャリストやクリエイターとのコラボレーションを通じて、新しいクリエイティビティを形成していく。

ダンス、もといにボディランゲージを通じて、表現者として日々進化する彼の今後の活動に注目してほしい。

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